「 け ん か 」
※このお話に登場いたします「古代家の子供たち三人(守・航・愛)」の設定は
サイト「古代君と雪のページ」のオーナーあいさんより
拝借しております。(あいさんご了承済み)ありがとうございました!
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「あ〜〜〜〜〜ん!!おにいちゃぁん!つぎはぼくだよぉ〜〜!!」
「いーから、ちょっとだけ!すぐに代わってやるからさっ!」
「あ〜〜〜〜〜!!だめぇっ!!」
涼しい秋のとある一日、珍しく進と雪の休暇が一緒になり
進が自宅のリビングでのんびりと読書をして過ごしていると、いつものごとく
二人の長男・守(まもる)と次男の航(わたる)がTVゲーム機の取り合いを始めた。
「おにいちゃんばっかりずるいよぉ〜〜〜!あ〜〜っ!だめぇっ!!」
「うるっさいなぁ!ちょっと待ってろって言ってるだろっ!!」
ピコピコッ! テケテケテケテケ───ッ♪ パシュッ!パシュッ!
チャラララララ〜♪ ピッピッピッ! ピッコン!ピッコン!
TV画面に映るゲームキャラを食い入るように見つめ、
コントローラーを動かす守の横で、航が必死にわめき続ける。
「まぁ、二人ともなぁに?さ、もうゲームは片付けなさい。
お昼ごはんの時間でしょ。」
隣のダイニングのテーブルに昼食のお皿を並べながら
ママの雪が二人に声をかける。
「だぁって、おにいちゃんがぼくにじゅんばんかわってくれないんだよぉ〜!」
「だから、ちょっと待ってろってばっ!!」
ぺ ち ん !
とうとう我慢できなくなったのか、航の可愛い手のひらが守にビンタをお見舞いした。
「・・・ぃってぇっ!!何すんだよっ!!」
ぱ ち ん !
すかさず守が仕返す。
いつもならここで びぃぃぃぃぃっ!っと泣き出してしまう航だが
今日はよほど悔しかったのだろう、さらに、
ぺ ち ん !!
反撃に出た。
「あーっ!!ぼく2回もやってないだろっ!!」
怒った守がコントローラーを放り出し、航のほっぺたを
両方に み───っと引っ張る。
「ふぇっ・・・。」
半ベソをかきながらも航は負けずに同じく守のほっぺたをひっつまむ。
「いってぇえええっっ!!」
すると守が航の髪の毛を引っ張る。
「いたぁあいよぉ〜〜〜!」
「ちょっと二人ともっ!!いい加減にしなさいっ!!!」
雪がとうとう怒り出し、二人を止めようとした時、
夫の進がそんな雪を制した。
「あ、あなたっ!」
「いいからほっといて、たまにはケンカぐらいやらせろよ。」
「だって・・・。」
「ほら、雪、見ろよ、いつも大人しくて守にやられっぱなしの航が
あんなに食ってかかっていってるだろ?あれってすっげぇ成長だよ。」
「ええ、でも・・・。」
「それに・・・“あこがれ”なんだ。兄弟ゲンカって。」
「え?」
「おれ・・・兄さんと10歳離れてたろ?兄さん・・・俺を可愛がってはくれてたけど
向こうは俺よりずっと年上で、大人で・・・ケンカなんかしたことがなかったんだ・・・。」
「進さん・・・。」
・・・そのお兄さんも今は・・・。
一人っ子だった雪も兄弟ゲンカの経験がなく、ずっと兄弟や姉妹に
憧れの気持ちがあっただけに、そんな進の気持ちがわかるような気がして
進と同じように子どもたちの方へ目を向けた。
見るとぺちん!ぱちん!と叩き合いをしていた子どもたち二人の顔は
すっかり泣き顔になってしまっている。
すると航がすっく!と立ち上がり、涙で顔をくしゃくしゃにしながら
精一杯の大声で叫んだ!
「ヒッ・・・ク・・ヒッ・・・ク・・・エッ・・・エッ・・・お・・・お・・・
お前のかあちゃん デベソッ!」
しみじみと子どもたちを見ていた進と雪、あっけにとられてしまった。
「な・・・なんですってぇ〜っ!!」
突然の航の言葉に怒る雪に対して、ウケたのは進である。
「あははははははっ!デベソか、そいつはいいっ!!あははははははっ!」
「もぉ〜〜っ!!進さんったらっ!私がデベソってどういうことなのっ?!」
カンカンになった雪が進にかみつく。
「はははははははっ!悪い悪いっ!けど子どものケンカだよ。本気に・・・。」
すると今度は守が立ち上がって
「なんだいっ!バカァッ!
お前のとぉちゃん アンポンタンッ!」
「へっ☆??」
進と雪が顔を見合わせて一瞬固まる。
「きゃははははっ!やっだぁ〜!守ったらぁ〜♪」
「ア・・・アンポンタン〜???俺がか?」
「ぷふっ!進さん、怒らない、怒らない♪子どものケンカでしょ?!」
「い───や!許せんっ!!こらぁっ!!守っ!航っ!!
お前たち、おんなじ兄弟でなんてケンカしてるんだっ!!」
雪がくすくすと笑う横から進がズカズカと子供たちの方へ歩み寄り、
「こらっ!守っ!!お父さんが“アンポンタン”ってどういうことだぁ〜〜っ!」っと
守をぐっと右腕に抱え込む。
突然パパにガッシリと抱き上げられ、ビックリした守は
大慌てでパパに“ごめんなさい”をする。
「わぁ〜〜〜んっ!!!パパァごめんなさい!ごめんなさい!ごめんな・・・ふぇっ???」
守の声が途中で止まった。
抱きかかえられたまま、守がふと、パパを見上げると・・・
パパ、にっこり笑ってる。
「こらぁっ、航!ママのおへそって、そんなに“デベソ”なのか〜っ?」
右脇に守を抱えたまま、ぐぐぐっと腰をかがめた進が航に目線を合わせる。
「え・・・っと・・・ん・・・っと・・・あ・・・あのね・・・ママのおへそ・・・かわいいよ。」
進の目がクッと笑う。
「ははははははっ!よ───し、よく言った!いい子だぞ、航!」
そう言うと進は左脇に航を抱え上げると立ち上がり、
両脇に二人の子どもを抱えてブン回し始めた。
たった今ケンカをしていた守も航もキャッキャッと声を上げて笑っている。
「ん、もうっ!航ったらぁ。」 雪が呆れながらつぶやく。
「ふふふっ。でもさすがパパね。二人のケンカを止めちゃったわ。
さてと、愛を起こしてこなくっちゃ。」
子どもとはしゃぎながら進は考える。
─── 幼い子どもたちがこんなことで無邪気に兄弟ゲンカが出来るのは
それだけこの地球が平和だってことなんだ。
守、航、大人になるまでたくさん兄弟ゲンカしろよ。
そんな兄弟の思い出をいっぱい作っておくんだ・・・いいな! ────
「パァパ〜!もっとぉ〜〜〜っ!!」
「よーし!もう一回いくぞ〜っ♪!」
ぶぅん!ぶぅん! くるくるくるくるーっ!
「きゃはははははーっ!」 「もっともっとぉ〜〜っ!!」
「あらあら、三人とも賑やかだこと、ね、愛ちゃん。」
三人がリビングでキャーキャーと騒いでいるところへ
まだまだおねむの長女・愛を抱っこした雪がリビングへ戻ってきた。
「さあさ、三人とも、手を洗ってらっしゃい。お昼ごはんよ。」
「お、よしっ、守、航、次は洗面所だぞ。」
「はーい♪」
「僕お腹すいたぁ〜♪」
進が二人を両脇に抱えたまま洗面所に行こうとして雪の横を通り過ぎたとき、
チュッ!!
かわいい愛ちゃんを抱っこした雪のほっぺに軽いキスをひとつ。
「きゃー♪ぱぱ、ままにきすしたー♪」 航が何故か大喜びではしゃぐ。
「ばーか、いつもしてるだろ!ねぇパパァ、ママの口にはしないのぉ〜?」
航の反対側に抱えられたままで守が突っ込む。
「後のお楽しみにとってあるんだ!」 進がさらっと言い流す。
「ばか!」 雪は照れながらも嬉しそう。
なんでもないお休みの日だけど
なんでもない兄弟ゲンカだけど、
古代家のみんなは、とっても、とってもしあわせでした♪
お わ り ♪
(2003・10・8初出)
2004・8・25
「♪もどる♪」